【金編鐘】
金編鐘、清・乾隆年間、全体の高さ350センチ、幅340センチ、鐘の高さ23.8センチ、直径16.1センチ。
金編鐘は純度40%の金で鋳造され、双龍紐を特徴とし、表面には金メッキが施されていることから正真正銘の「金鐘」と見なされた(古代の人々は銅を金や吉金、金を黄金、真金と称し、銅製の鐘も慣習的に金鐘と呼んでいた)。鐘の胴体は丸々とした楕円形で、正面中央には鋳造年を示す「乾隆五十五年制」の文字、背面にはそれぞれの音律名が見られ、立体的で美しい雲龍紋があしらわれている。鐘の開口部に近い六つの突起がある縁の部分を叩き、音を鳴らす。先秦時代の大小さまざまな鐘が並ぶ編甬鐘または編紐鐘と異なり、清の宮廷の編鐘は16の鐘の外形と大きさが全く同じであり、鐘の厚みによって音程が分かれる。鐘の胴体が薄くなるほど音はより低くなり、順番に倍夷則、倍南呂、倍無射、倍応鐘、黄鐘、大呂、太簇、夾鐘、姑洗、仲呂、蕤賓、林鐘、夷則、南呂、無射、応鐘といった清代の音律である四倍律および十二律に対応している。
演奏時には16の鐘からなる編鐘を枠に吊るし、上段に八陽律、下段に八陰呂というように音律の陰陽別に上下に分け、低音から高音へと順に並べる。鐘を吊るす枠は簨簴と呼ばれ、簨が横木であり、上段の簨の両端には龍首、簨の上には5羽の金鸞があしらわれている。また、簴は縦木で、左右の簴の下には彩り豊かな伏せ獅子と台座が見られる。さらに、枠の表面は金塗りで、金鸞と龍首に施された色とりどりの房飾りが壮麗さと豪華さを醸し出している。
編鐘は先秦時代から歴代の宮廷雅楽における礼制で重んじられ、「八音」の中で金に属する楽器だった。明・清の宮廷で、 編鐘は祭壇や宗廟での祭祀や皇宮における儀式で演奏される中和韶楽で特に用いられ、天地の神と至高の皇帝権力のステータスおよび象徴とされた。この金編鐘は乾隆帝が乾清宮で儀式を行うため、特別に作らせたものである。元来乾清宮で用いられていた銅編鐘が乾隆55年5月に西華門内の清茶房と外果房で起きた失火で焼けて使えなくなり、乾隆帝は寧寿宮にあった鋳金編鐘をまねて乾清宮で用いる金編鐘を作るよう命じた。この金編鐘は純度40%の金を合わせて1万両余り使用し、表面には金メッキが5回施され、数十両の純金メッキが用いられている。