故宮博物院とシカゴ美術館が共同で主催する特別展「林泉の趣――中国と世界の庭園文化展」が2025年4月1日から6月29日まで、故宮の午門正殿と東西雁翅楼展示ホールで開催されています。
特別展の開幕式は3月31日に故宮の宝蘊楼で行われ、故宮博物院常務副院長の婁瑋氏が司会を務めました。故宮博物院院長の王旭東氏、シカゴ美術館館長のジェームズ・ロンドー氏、ヴェルサイユ宮殿チーフ・キュレーターのエリザベス・メゾヌーブ氏、公益慈善研究院主席の黄嘉純氏が出席し、挨拶を行いました。また、中国文物学会会長の顧玉才氏、中国博物館協会理事長の劉曙光氏、中国風景園林学会理事長の李如生氏、故宮博物院党委員会書記で副院長の都海江氏、国家文物局交流協力司(流失文物追跡返還弁公室)司長の温大厳氏、および文化・観光部(省)国際交流・協力局(香港特別行政区・澳門<マカオ>特別行政区・台湾地区弁公室)、中国外文出版発行事業局、国内外の文化財保護・研究・展示関連機関、北京市人民政府関連機関、北京故宮文物保護基金会など関連協会、学会、基金会、故宮博物院の指導者および退職した元指導者など、国内外の来賓約100人が開幕式に出席しました。今回の特別展は香港ジョッキークラブが後援し、公益慈善研究院が単独協賛しています。
故宮博物院院長の王旭東氏は挨拶の中で、「グローバル文明イニシアティブが提唱されて以来、故宮博物院はシステム化された多次元の革新的実践を通じて、中華の優れた伝統文化が世界との対話・交流・協力の革新的なモデルを積極的に構築してきました。今回の特別展が文化遺産の持続可能な発展を促進すると同時に、現代社会の発展のために参考となることを希望します」と述べました。
シカゴ美術館館長のジェームズ・ロンドー氏は、「シカゴ美術館は1879年の設立以来、時空や文明、文化を超えた芸術体験を創造することで探求精神と思想交流を喚起する使命を常に堅持してきました。今日まかれた文明交流と相互参考の種が、将来も花を咲かせ続け、ご観覧いただいた多くの方にインスピレーションと示唆をもたらすことを願っています」と述べました。
ヴェルサイユ宮殿チーフ・キュレーターのエリザベス・メゾヌーブ氏は、「ヴェルサイユ宮殿と故宮博物院は昨年、『紫禁城とヴェルサイユ宮殿――17、18世紀の中国とフランスの交流』展を共同で開催しました。今年もヴェルサイユ宮殿は今回の特別展を非常に重視しており、ヴェルサイユ宮殿とその庭園を描いた貴重な絵画を複数貸し出しており、双方の友好協力関係を継続させています」と述べました。
公益慈善研究院主席の黄嘉純氏は、「今回の特別展は、香港ジョッキークラブと公益慈善研究院が故宮博物院と協力して推進している『万方伝播中華文明及び文化・科学技術人材育成』計画の重要な一環であり、芸術と科学技術の融合を通じて、文化・科学技術人材を育成し、中華文化を発揚し、国際交流を促進するものです」と述べました。
雅集、鑑蔵、遊山、静修、観花、暢音
6つのテーマで「林泉の趣」を伝える
特別展の中国語タイトルとなっている「楽林泉」は、展示品「皋塗精舎図軸」に乾隆帝が自ら記した題字から取ったものです。「林泉」とは、中国の古代の人々が自然の山水を詩的に表現した言葉であり、「楽林泉」(「楽」は「林泉」にある)というのは、人々が暮らしの中で庭園に寄せた追求です。特別展は6つのパートに分かれています。「雅集」「鑑蔵」「遊山」「静修」「観花」「暢音」という庭園にまつわる6つの風雅な事柄をテーマに、代表的な国内外の展示品200点余りを選び、庭園の景観と文学、演劇、歴史的な故事などの要素を巧みに融合させ、中国の古典的庭園に立脚し、世界の庭園文化に目を向け、時空を超えた対話を展開し、中国と世界の庭園芸術の美を展示し、そこに流れる人的・文化的な哲理を明らかにしています。
今回の特別展では、伝説的な「西園雅集」が行われた北宋時代の文人・王詵の個人庭園、明代の蘇州の定慧寺禅院、乾隆帝が江南に行幸した後に江南の文人庭園と北方の宮廷庭園を融合させて造営された乾隆花園といった庭園に関連する芸術品を鑑賞することができます。ほかにも、ポンペイの別荘庭園、中世の修道院庭園、フランスのヴェルサイユ宮殿庭園、日本・江戸期の庭園、モネの庭園など、様々なスタイルの世界の庭園に関する展示もご覧いただけます。展示手法では、建築の立体模型、復元模型、歴史的空間の再現などの形式を用いて、紫禁城庭園の造営の知恵を生き生きと解説しています。
展示されている200点余りの文化財の中には、中国の歴代の著名な書家や画家による書画作品、清朝が所蔵していた書画骨董及び古典家具が含まれているだけでなく、西洋の油絵、彫刻・塑像、日本の浮世絵、ペルシャの細密画など、外国の逸品も数多く展示されています。そのうち70点の貴重な文化財は、米国のシカゴ美術館、メトロポリタン美術館、イェール英国芸術センター、フランス・ヴェルサイユ宮殿、中国国家博物館、天津博物館の収蔵品です。また、展覧会の協力企画には、清華大学建築学院景観学科の朱育帆教授とその研究チームが参加しました。今回の特別展は北京故宮文物保護基金会の協力を得ています。
庭園をテーマにしたグッズが午門特設スペースに登場
特別展と同名の図録が4月に発売
特筆すべきは、今回の特別展では午門の東北崇楼に文化クリエイティブグッズの展示スペースを設けている点です。抽象的な空間演出とカスティリオーネの『花鳥図冊』の融合を通じて、没入式の文化クリエイティブグッズ展示・陳列スペースを作り出しています。グッズのデザインは、康熙帝の「五彩十二月花卉紋杯」や「緑色緞繍桂兎金皮球花紋花神衣」、モネの絵画「睡蓮」、葛飾北斎の浮世絵「桔梗に蜻蛉」、ヘンリー・フレッチャーの「花の十二ヶ月」などの展示品からインスピレーションを得ており、こうした庭園をテーマとしたグッズ数十点がお目見えし、伝統文化と現代的なデザインが巧みに融合されています。
また、特別展と同名の図録「楽林泉:中外園林文化展」(「林泉の趣――中国と世界の庭園文化展」)が2025年4月に出版される予定です。同書は展覧編と研究編に分かれています。展覧編では、展示されている全ての文化財を高精細画質で掲載し、研究編では、故宮博物院と清華大学の学者7人による学術的文章8篇を収録し、建築や庭園、文化財、芸術といった様々な視点から、国内外の庭園に対する研究と討論を展開しています。
今回の特別展は故宮博物院の入場券で観覧することができます。ただし、観覧には予約が必要です。観覧をご希望の方は、「故宮博物院」のオフィシャルサイト(https://bookingticket.dpm.org.cn)から実名で予約することができます。